『アマ100勝の実力者阪田哲男が初めて明かす!「ゴルフ力」の鍛え方』 阪田哲男 2014年3月 株式会社Pargolf & Company
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打つ前にミスをしない、ということを違う言葉で表すなら、自分の基本を持つということになる。もちろん、この基本は正しいものである必要はあるが、考え方、セットアップに自分なりの明確な基本があれば、毎回そこに合わせることによって、打つ前のミスを抑えることができる。
基本を知っていれば、ミスショットした場合に原因を突き止めやすい。考え方やセットアップが基本からズレていたのなら、打つ前にミスをしていたということがわかる。正しく考え、正しく構えていたのなら、スイングのどこかにエラーがあったことがわかる。
たとえば、多くの一般ゴルファーはアドレスで右を向く傾向がある。視線は目標を向いているのに、体は右を向いている。本人はこれに気がつかない。構え通りに飛べばボールは目標の右にいく。自分はきちんと構えているつもりだから、右に飛んだのはスイングに問題があったと考える。
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私はプライベートのラウンドであっても常にパープレーで回ることを目指している。仲間とワイワイいいながら楽しくプレーしていても、スコアに対しては妥協したくない。試合ほどの緊張感がないが、真剣に目の前の一打に向かっている。
ゴルファーは言い訳をしたがることが多いように感じる。スタート前に「きょうは寝不足」や「仕事が忙しくてしばらくクラブを握っていない」と予防線を張る方もいれば、たたいたときに「きょうは遊びだからスコアは関係ない」という人もいる。
プライベートのラウンド途中でスコアを崩したとき、そこで「遊びだからまあいいや」とあきらめていては進歩がない。自分のハンディキャップ通りのプレーに少しでも近づけられるように最後まで努力する。この積み重ねが実力を底上げしていくのだ。
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初めて日本アマの舞台に立ったのは大学3年のとき。予選を勝ち上がって、初めて駒を進めた日本アマ。コースが難しいうえに、これでもかというくらいにラフを伸ばしていた。そんなセッティングでプレーした経験はなかった。周りの選手はみなうまそうに見える。
「最下位になってしまうのではないか」という悲観的な考えが頭をよぎった。たとえばはじめて競技に出たとしよう。周りはみんな堂々としていて、うまそうに見える。それに対して自分は、緊張で地に足がついていない。よくあることだ。
しかし、同じように緊張している選手はいくらでもいる。優勝を狙っているような選手は、さらに、2倍、3倍のプレッシャーを感じているものなのだ。みな何食わぬような顔をしていても内心は違う。そう考えれば、少しは気が楽になるのではないだろうか。
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私が若いころは「見て盗め」という時代だった。見て学ぶにはやはり上級者と回りたい。この人はなぜいいスコアで回ってくるのかを観察するのである。どのようにホールを攻めているか、なぜここでこのクラブを持っているか、あるいはミスをしたときはなぜミスをしたのかを考える。
「そんなことをいわれても、ボールがあちこちにいってしまうから観察している余裕などない」と思われる方もいるだろう。しかし、必ず一緒になる場所はある。ティグラウンドとグリーンだ。すべてのティグラウンドとグリーンで上級者のプレーを観察できる。これを利用しない手はない。
腕に自信のない方は上級者と回ると迷惑をかけるのではないかと心配することがあるようだが、気にすることはない。いくらたたいても次のショットへの準備や移動がスムーズであれば問題はないのだ。上達したいのであれば気後れせず、積極的に上級者とプレーするのも一つの方法だ。
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1991年、私は初めてマスターズを現地で観戦した。そのとき、ある方からお誘いを受けて大会翌日にオーダスタナショナルGCをプレーできるという、この上ない幸運に恵まれた。ゴルファーならば一度はプレーしてみたいコース。感激の一日だった。
イギリスのリンクスコースを「自然」と表現するならばオーガスタは「芸術」。まるで絵画のようなコースだった。ティショットは「思い切りフックで飛ばしてこい」とコースが語りかける。そして、グリーンはわずかな誤差も許さないシビアさである。
私は線で攻めるのがゴルフだとこの章の冒頭で述べたが、オーガスタは別。点で攻めることができなければ通用しないコースだと感じた。
コース全体の印象は「景色が大きい」ということだった。フェアウエー幅を歩測すると60ヤードほどもある。そして、ホールを隔てる木は高い。実はこの景色が曲者で、プレーヤーの距離感を惑わしているのである。
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オーガスタのように広々としたコースは、実際の距離よりも近く見えるものである。分っていながらも錯覚してしまう。それがゴルフの難しいところである。逆に日本の林間コースのような狭いコースではグリーンが遠くに見えるものである。
オーガスタで錯覚に惑わされたのは距離感だけではない。私が右に曲がると読んだラインでキャディが左に曲がると指示するようなことが何度かあった。曲がり幅を間違うことはあるが、逆に読み違えることはそうない。それが1ラウンド中に何度もあったことは衝撃的だった。
これも、周囲の景色が錯覚を引き起こすような設計になっているからだ。コース全体の地形に、グリーン周りやグリーン自体のアンジュレーションが絡み合って実際の傾斜を見事に隠しているわけだ。ゴルフは錯覚との闘いでもある。錯覚があることを頭に入れておけばプレーの幅は広くなる。
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正しいセットアップとは何か。アドレスの姿勢や体の向きも大切だが、もうひとつ忘れてならない大切なものがある。それはボールの位置だ。ボールを常に同じ位置にセットすることは難しい。自分では同じ位置にセットしているつもりでも、少しずつずれていく。
最も難しいのはボールと体の距離感である。私自身もこれは永遠のテーマであると思っている。アドレスに入るとき私は右手にクラブを持ってボールにセットする。このとき、右ヒジをを軽く体につけている。この態勢が私の基準である。
ゴルファーはボールの位置が体から離れるほど手で打ちにいってしまう傾向がある。逆に、ボールが体に近いほど手を使いにくい。つまり、体のターンを使ってスイングすることになる。どちらがより正確にかつ遠くにボールを飛ばせる確立が高いか、それは後者である。
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正しいセットアップができても、ミスが出ることはある。アドレスの向きはよかった、ボールの位置も間違っていない。それではなぜミスになったのか。原因を検証したとき、最も多いのがテークバックを急いでいたということである。
私の経験上、ゆったりしたリズムでテークバックできれば自然と肩が入ってくる。グリップが肩の高さまで上がったときには、すでに肩が十分に入っている型が出来ているといっていい。実際にやっていただくと分ると思うがゆったりしたテークバックでは手だけでクラブを上げることは難しい。
スイングというものは往路を間違えば必ず帰り道も間違ってしまうものだ。一度動き出したものを修正することは難しいからである。逆に、往路が正しれば帰り道を間違うことはない。急いでクラブを上げるのも、ゆったり上げるのも自分次第。ゴルフボールはじっとしている。慌てることは何もない。
飛ばしたいときはさらにもう一呼吸ゆっくりとクラブを上げていく。イメージとしては重いハンマーを上げるような感じである。ゆったり振ればよりためができて球にしっかりと体重を乗せることができる。結果的にインパクト時にはヘッドスピードが出ているはずである。
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パッティングにおける我々アマチュアとプロの一番の差は、芯に当てられるかどうかだ。芯を外してもボールは転がっていくように見えるが、現実には大きな差がある。芯を外した場合は転がりが悪い。ラインに乗ったように見えても最後にはよれてしまうのだ。
パッティングのとき、我々アマチュアはラインに対して真っすぐにストロークしがちだ。だが、これではワキが甘くなる。フォローを左に振り抜くのが本当の意味でのスクエアなストロークだ。芯でとらえ、強く、いい転がりを実現するにはこのストロークが最も適している。
私は緩みのないストロークをするために、左手の小指と薬指をしっかり握るようにしている。トム・ワトソンが全盛期のころ、彼も同じように左手の小指と薬指をしっかり握っていると話していた。理由はテークバックでヘッドが揺れにくいから。私も、同じ感覚だった。