『ゴルフ賞金女王 イ・ボミの教え』 イ・ボミ 2016年1月 株式会社主婦の友社
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ゴルファーはみな、250ヤード飛ばそう、100を切ろう、9ホールでパーをひとつとろう、といったように自分なりの目標があると思います。私もそうですが、私の場合、目標は試合によって変わります。たとえばスコアの数字を目標にするなら、コースセッテングが難しかったり、調子が悪い時は多めの数字を設定します。
ひとつの目標にこだわるのも大切ですが、それだと息切れすることがあるかもしれません。ラウンド途中で100が切れないとわかってガッカリしてしまったことがある人もいるのではないでしょうか。
ですから、ときには目標に柔軟性をもたせてもいいと思います。そのほうがラウンドを楽しめますし、結果的に目標を達成できなくても集中力が持続できますから、何かを得ることができるはずです。
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練習やラウンドをする前に、必ず心得ておいてほしいことがあります。それはスイングするときには多くのことを考えず、1つのポイントだけに絞ることです。やらなければならないことが2つ3つあっても、すべてやろうとすると何ひとつできません。
1つに集中するほうがスイングがよくなる可能性は高いですし、失敗してもどこが悪かったかが明白になります。結局、スイング作りはこの繰り返しなのではないかと思うほどです
大変そうですが、続けていくとこれが結構楽しくなってくるんです。もしかしたら私のゴルフの原点は、このあたりにあるのかもしれません。
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私の身長は158センチで女子プロの中では小柄なほうです。身長が高くて腕の長い選手は、スイング軌道が自然とアップライトになり、スイングアークも大きくなるので飛ばせますが、私の場合はスイングがフラット。上からボールを叩くようには打てません。
でも、軌道がフラットでも自分なりにスイングアークを大きくすることはできます。アップライトの人に比べるとスイングプレーンは寝ますが、アークを最大限にできれば飛ばせるのです。
プレーンがフラットだとクラブが地面と平行に動く時間がいくぶん長くなるため、ダウンスイングでヘッドを低い位置から入れることができます。点でなくゾーンでボールをとらえられるので、飛ぶだけでなく方向性もよくなります。
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アマチュアの方の場合、真っすぐ飛ばそうとするとインパクトを意識するようです。インパクトで「当てにいく」「合わせにいく」といった動きはその典型。こうなることによってスムーズに振り切れず、スクエアにインパクトできない、スイング軌道がブレる、といった事態に陥るのだと思います。
私の印象では、本番でこそフルスイングするべき。そのほうが結果的に曲がりません。フルスイングとは力いっぱい振るということではなく、インパクトが緩まないよう一定のリズムでバランスよく振るということです。
フルスイングでは、インパクトの意識はありません。インパクトを意識せずに振り抜く。あえていえば、インパクトよりはフォローをしっかり振る意識のほうが強いと思います。
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テークバックからバックスイングのプロセスでは、クラブが自分のスイング軌道から外れないようにすることが大事です。滑り出しのこの段階で軌道を外れてしまうと修正がきかないので、私的には、ゆっくり丁寧に動いています。
イメージとしてはスタートから30センチはヘッドを真っすぐ引く。ヘッドは右ヒザの前あたりにくるまで真っすぐの感じです。もちろん手先では動かしません(手首も使わない)。スイングは回転運動ですから、体の回転でテークバックします。
(ここまでが)テークバックだとしたら、それ以降のトップまでがバックスイング。ここで右肩と右ヒジを回してクラブを振り上げます。こうするとスイングを高い位置に保て、ダウンスイング以降で右肩が下がるのを防げます。ここでは、左サイドを動かす意識はゼロです。右サイドを回し、結果的に右股関節に体重が乗ればOKです。
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トップから切り返しでは、スイング中で唯一、体重移動を意識します。バックスイングでクラブを振り上げたら、左のお尻を左足の上に乗せるイメージで全体重を左に移動します。この動きをきっかけに体を左へ回すのがダウンスイングです。
ここで大事なのは、腕を体の正面に真っすぐ下ろすこと。クラブはインサイドから下ろすのが理想ですが、私は考えると右肩が下がって振り遅れやすくなるので意識しません。
もひとつ大切なのは、左ヒザのポジションです。切り返しで体重移動したら、そのときのポジションに左ヒザをキープしておく。そして左太モモの内側を外に回します。この意識を持つと腰がスムーズに左にまわり、いいタイミングでクラブが下りてくる。
ダウンスイングでは体の右サイドの意識は一切ありません。私の場合、右で引き上げ、左で引き下ろすスイングイメージが有効なんです。ダウンスイングで左ヒザが左へスライドすると、腰が回転できずにスエーします。インパクトでフェースが開く原因のひとつなので注意しましょう。
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私にとってのアプロ―チのベーシックはピッチ&ラン。キャリーとランが5:5の割合になるように打つのが基本です。これを基準にアプローチする状況やグリーンのコンディションに合わせ、高いボールや低いボールを打つ。こうしてキャリーとランの割合を変えて寄せ方をアレンジしています。
アプローチで大事なのはアドレス。構えをキープしたまま打つイメージが必要だからです。ピッチ&ランのアドレスでは、左足に多めに体重を乗せます。アプローチではボールを飛ばさなくていいので、体重移動は必要ありません。決めたポイントでボールを捉えるうえでも左足重心は有効です。
私の場合、上体をリラックスさせないと思ったように打てません。そのため一度構えてからヒジを曲げ、少し両ヒジの距離を離す動作を入れて、腕から力を抜くようにしています。上体に力が入るほど手先で振りやすくなります。スイング軸もブレやすいので、いつも気をつけています。
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ダフリやトップなどのミスはクラブヘッドが上下することで起こりますが、その原因の多くはヒザにあります。特に右ヒザが前に出てくるとシャンクも出るので、アドレス時のヒザの角度を保ったまま打つようにしましょう。
そうしていないつもりでもヒザが動いてしまう方がいます。そんな人はアドレス時の体重配分をキープし、両足のカカトをつけたままインパクトするように心がけるといいと思います、いわゆる”ベタ足”でアプローチするわけです。
ベタ足のままだとスムーズに振れませんから、最低限インパクトまでベタ足を保つようにします。また手元が先行するのもフェースが開く原因ですから、グリップエンドがつねにおヘソを向くように体を回転させましょう。