『眼力』 斎藤一人 2010年6月 株式会社サンマーク出版
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世の中には「まさかこんなことになるとは!」という出来事が起こり、困っている人がたくさんいます。(略)けれど、事前に知っていれば避けて通れるものが山ほどあるのです。そこに必要なものが眼力、見抜く力です。
お金は自分の器量以上には持てません。いくらあっても、なくなります。なぜか、そういうものなのです。けれど、人間の器量はいくらでも大きくなります。ということは、自分の器量を大きくすればいいのです。
お金には狙われるという、さだめがある。そういうさだめがあることを知れば知った時点で、ちょっと器量は大きくなります。そして狙われ方にはパターンがある。そのパターンを知れば、さらに器量は大きくなるのです。
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自分は今までずーっとモテないできたのに、急に女の人のほうから近寄ってきたときは、ちょっと立ち止まって考えなきゃいけません。ありえないことが起きたときは用心したほうがいいですよ。これは女性の場合も同じです。
私は「あなたの彼氏(彼女)を疑いなさい」といっているのではないんです。だけど、ありえないことが起きたとき、その次の展開として彼氏が、「お金を貸してくれ」といってくることがありますよ、そのことは頭に入れておいてください、といっているだけなのです。
次に二人が会う時、「実家がお金持ちなんだ」とか「叔父が一流企業の社長だ」とかいいだす。けれど、本当のお金持ちは、そんなこといいません。お金持ちほどいわないのです。なぜかというと、狙われたくないからです(笑)。
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一人さんは昔、お弟子さんたちによくこんなことをいっていました。「善きに強きは 悪に強くないといけないよ」。
「悪に強い」というのは、悪を見抜く眼力がある。要するに、悪人が考えていることがわからないといけないのです。人は「人がいい」だけでは楽しく生きられません、いい人でも、悪に弱かったら、いろんなものに引っかかってしまいます。
ちょっと、両手をパンと叩いてみてください。右手と左手、どちらから「パン」という音が出たのですか。右手と左手がぶつかって音が出たんですよね。犯罪という響きは、両手をパンと鳴らしたのと同じです。
人をだます人間は悪人です、だまされた方は被害者で、本当にお気の毒です。けれど、お金をだましとるという行為は、だます人間とだまされる人間がいてはじめて成り立つ。だまされなければ、その人は罪をおかさずに済むのです。
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日本と違って、中国の国境はいろんな国と接しています。そうすると、たとえば、北朝鮮との境目に山があったりすると、どこまでが中国の領土で、どこからが北朝鮮の領土か非常にわかりづらい。だから、双方が主張するのだけれど、中国は主張する以外に、おもしろい方法をとります。
ある日、突然、新聞にこういう見出し。「中国領○○山に雪男がでた!」。それで、雪男の足跡やなんかの写真が載ってるんです。そうすると、みんなが、「わぁ、中国の○○山に雪男が出た!」と、騒いでいるうちに自然と「そこの山は中国の山だ」ということになる(笑)。
世界的にそうなってしまうのです。その後は、もう、雪男の話しはさーっとなくなります。「国家がそんなことするんですか?」って、しますよ。そういうとこなんです、中国は。だから、自分のしっかりした眼力で見なきゃいけません。
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今は、個性の時代。みんな「自由になっていいね」というけれど、本当は、国の指導者たちは自分たちがもうアイディアがないから、国民にアイディアを出させようとしているんです。だから「個性だ、個性だ」といい出した。全員が同じ考えだったら。アイディアは出ない。わかりますか。
今まで、国が立てていた作戦は、すべて当たっていました。アメリカやヨーロッパという進んだ国のやり方を見本にしてきたからです。けれど、今はもう日本はトップ国、見本がないのです。今はわからない。だから、もう国を当てにすることはできないのです。
だから、みなさんが期待できないような人たちが上にいるんだ、ということを、ぜひ、頭のなかに入れておいてください。決して、上の人がなまけているとか、いっているのではないですよ。本当に、どうしていいのか、わからないのです。
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今、世の中が不況です。でも一人さんは「この不況を乗り切るのに、汗水たらして努力しちゃいけない」というのです。なぜ、私は「汗水たらしてはいけない」というのかというと、今までと同じ努力で乗り越えられるのなら、とっくの昔にこえているんです。
日本人はすごい努力家です。その努力家が今までと同じ努力でこえられないのが、今の不況なんだ、という眼力。私はそれをいっているのです。「じゃあ、どうしたらいいんですか?」とういと、発想を変えなきゃいけない。
だから「今までと同じ努力じゃないとすると、何だろう」と考える。それと同時に、この先どうなるかをじぃーっと見抜くのです。そうすると、陰きわまれば陽になる。
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これからどんどん高齢化が進むということを考えたとき、お店の人は用事があるからお客さんのところへ行く、ではないのです。「近所まできたけど、おばあちゃん、元気?」とかって。わかりますか?これも眼力ですよ。
お年寄りのことを考えて店をやるのだから、お年寄りが喜びそうな商品も置いておく、孫に買ってあげたいようなものも置いておく。これが商人の眼力です。ところが「自分が電気屋だ」と思っている人は、電気製品しか扱わない。お年寄りを喜ばす眼力がないのです。
ほとんどの人は今まで、見抜く、ということをしてこなかったと思います。テレビを見るとか、新聞を読むとかいうのは、情報を入れているだけです。情報を入れることも大切だけど、入れるだけで見抜くことがなかったら、情報なんかいくらあってもムダです。
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小さい工場でも「あの会社は、すごくいい製品を作ってるな」って評判が立つと大手は仕事を出すんですよ。そのとき、大手から「年間このぐらいの量を作ってほしい。応じられますか?」といわれると、そこの工場はうれしくなって無理してでも応じようとするんですね。
そうすると、今度、銀行の人がやってくる。それで、何億円かかけて新工場を新設しましょう、という話になって、新設するのです。工場が出来上がって少したつと、なぜか、大手からの仕事がストップします。工場の社長は支払いができなくて困り果ててしまう。
そうすると、お金を貸してくれた銀行の人がきて「おたくを買いたいという会社があります」という。それで、会ってみたら、なんと工場に仕事を頼んでいた大手だった。気づいたときは後の祭り。工場から、持っていた技術まで、全部取られちゃうのです。
「そんなのありですか?」って、ありです。それを「知らなかった」というのは、社長業では通りません。社長は従業員を守る立場なのだから。眼力がないと、社員も、家族も守っていけないのです。
「おたくは銀行に信用があるんですね、すごいなぁ」そうやって、ほめる人はだれですか?「融資」というけれど、それ、ただの借金です。それがわからないのは素人。銀行に信用のある人とは、借金のない人です。そして一番信用あるのは、銀行にお金を積んでいる人です。
眼力って「次、どうなるのか」を知っていれば、いいだけですからね。こういうことを教えてくれる人がいなかっただけなんです。知らないから、簡単なことにも、みんな、ひっかかちゃう。知ったあなたは、もう昨日のあなたとは違いますからね。