モダン・ゴルフ徹底検証(デビッド・レッドベター)

『モダン・ゴルフ徹底検証』デビッド・レッドベター 塩谷紘訳 2000年12月
 


 
 
 

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ホーガンは1953年にマスターズ、全米オープン、全英オープンを制覇した。この全英オープンでホーガンはラウンドごとにスコアを縮め73-71-70-68で優勝してカーヌスティを征服した。毎日、コース攻略法を前のラウンドより少しだけ多く身につけていったのだ。
 

ホーガンは『モダン・ゴルフ』の中でショートゲームには触れていない。わたしも、本著では敢えて触れないことにする。しかし、ショートゲームの腕を上げることは、自己の潜在的可能性を引き出すために、あらゆるゴルファーにとって重要なことである。
 

ホーガンの説く基本に加えて『モダン・ゴルフ』が書かれてからの数十年の間にスウィングに関して明らかにされたいくつかの異なった考え方が理解できれば、皆さんは潜在的可能性を余すところなく発揮できるに違いない。そう信じて、わたしは本著を執筆したのである。
 
 
 
 

2
「私はフックが大嫌いだ。フックのことを考えると吐き気がしてくる。実際にフックをみると吐くかもしれない」。若いころのホーガンはフックに悩まされていた。
 

だから、彼はフックが出ないような体の動きを取り入れてスウィング作りを行った。わたしの意見では、左手の手の平で極端に深く握るホーガン式のグリップは、大半のゴルファーの場合、スライス系のショット、あるいはスライスそのものを生むことになる。
 

目の前で右手だけでクラブを持ち、クラブを体に対して45度に保つ。つぎに、左手をシャフトに対して90度の角度でクラブにあてがう。クラブは左手の小指の付け根のすぐ下と、人差し指の折れ目、つまり指を曲げて作った鍵の部分を結ぶ対角線上に来なくてはならない。
 

つぎに、左手をそのまま閉じてグリップを握る。親指はシャフトに密着させてシャフトの真上に自然に伸ばし、人差し指に隣接させる。クラブを目の前で握った場合、左手の指関節は2つほど見えるのが普通だ。これがニュートラル・グリップである。
 
 
 
 

3
右手についてはホーガンは、右手の平の指関節の付け根の線に沿ってクラブを置き、直接指で握ることを好んだ。わたしの持論では、右手一本でクラブを持ち上げたとき、クラブは手の平に対して斜めに収まり、小指のわずか下の部分で手の平に接触することが望ましい。
 

右手のグリップは基本的に”フィンガーグリップ”だとホーガンは言うが、わたしも同意見だ。しかし、わたしはクラブを右手の平に対して斜めに握れば、クラブを同じように斜めに握った左手とうまく合体するように思う。
 

グリップに関する結論を少し述べてみたい。クラブを握るときは左手の中指から小指までの3本指でしっかりグリップすること。また、右手の生命線の部分を左親指に押し付けること。こうして生じた圧力によって、スウィング中に両手は一体化したユニットとして機能する。
 
 
 
 

4
ドライバーで打つときのホーガンはおよそ20度ほど上体を前傾させていたが、大半のプレーヤーは平均して30度といったところだろう。わたしはホーガンのフラットな肩と腕のプレーンに比べ、体が自由に動かせるアップライトなプレーンを好むから30度の前傾確度に賛成である。
 

ホーガンは5番アイアンでショットする際、スタンスの広さは肩幅に合わせると説いた。しかし、これは普通の体型のゴルファーにとって、ドライバーの場合に許されるスタンスの幅なのだ。普通の体型のゴルファーはドライバー以外のクラブを使う場合、スタンスは肩より狭くすべきである。
 

わたしはゴルファー、特にツアー・プロに他の分野よりも集中して教えるのが、じつはこのセットアップである。ゴルファーは常にセットアップを変えているがそれを自覚していない。プレーの状況は日毎に異なる。だからセットアップが本人の気づかないうちに変わる原因はたくさんあるのだ。
 
 
 
 

5
わたしはホーガンの(フック解消の)”秘訣”を次のように解釈している。つまり、ウィーク・グリップに加えバックスウィングのトップで左手首にカップを作ること(スナップのような動きでに甲側に手首を折るこの動作は「カッピング」と呼ばれる)に集中したのだ。
 

スライス癖のあるゴルファーは、ホーガンの秘訣を応用することによって、問題をさらに悪化させることにしかならない。おそらくこれが、ホーガンがモダン・ゴルフの中で自分の秘訣について敢えて詳しく触れなかった理由だろう。
 

ドローを打つ際には、ホーガンはこのカッピングを忘れて普通にスウィングするだけでよかった。この場合、左手首を比較的平らに保ち、クラブフェースをよりスクエア(手首と前腕に対し平行)にした。このポジションだとボールは右から左へ飛んだ。
 

hogan01
左:フック解消(ホーガン方式) 右:スライス解消
「モダン・ゴルフ徹底検証」より
 
 
 
 

6
サム・スニードは、スウィングではただ一つのことだけ考えればよい、としばしゴルファーに助言しているという。つまり、インパクトではすべてをアドレスの状態に戻せ、ということである。
 

わたしは長年にわたって、アドレス時のシャフトの角度より、いくぶんアップライトなバックスウィングのプレーンでクラブを振るように指導することで、クラブをインパクトで正しいスロットに戻す練習面で多くの成果を上げてきた。
 

アドレス時より少し傾斜の強いバックスウィングのプレーンで、ダウンスウイングを始めたらクラブを少しフラットにするだけで、正しいプレーンに簡単に戻れるだろう。