『7つの習慣』(人格主義の回復)スティーブン・R・コヴィー 1996年11月 2013年8月(完訳版)
1/7
コヴィー博士の教えの中に中国の竹というものがある。その竹は種をまいても三年間は全く変化を見せない。ところが、三年後地上に少し芽を出すと同時にその竹はあっという間に20メートル以上にも伸びるという。その竹は三年もの間、くる日もくる日も地中深く根を張っていたのである。
自分の最高の望みを達成し、最大の困難を克服したいならば、自分が求める結果を支配している原則や自然の法則を知り、それを適用する。
自立は重要だ。それどころか不可欠であり、達成しなければならないものである。しかし、私たちの社会は相互依存で成り立っているのだから、自立という土台の上に、相互依存の能力を身につけなくてはならない。
2
建国から約百五十年間に書かれた「成功に関する文献」は、誠意、謙虚、誠実、勇気、正義、忍耐、勤勉、黄金律など、人間の内部にある人格的なことを成功の条件に挙げている。私はこれを「人格主義」と名づけた。
ところが、最近五十年間に出版された成功をテーマにした書籍は、いわば「個性主義」一色になる。成功は、個性、社会的イメージ、態度・行動、スキル、テクニックによって人間関係を円滑にすることから生れると考えられるようになった。
第二の偉大さ(才能)に恵まれていても、第一の偉大さ(人格)を欠いている人は多いものである。人格こそが第一の偉大さであり、社会的評価はその次にくる第二の偉大さである。
人格主義も個性主義もパラダイムの一例である。パラダイムとは、平たくいえば物事の「見方」であり、物事をどう認識し、理解し、解釈しているかである。物事をどう見るかが、私たちの行動を決めているのだ。
3
戦艦が、悪天候の中、演習航海を続けていた。暗くなって間もなく見張りが報告にきた。「右舷船首の進路に光が見えます」。「停止しているのか、動いているのか」と艦長は聞いた。「停止しています」見張りは答えた。その船はこちらの進路上にあり、衝突の危険がある。
艦長は信号手に「衝突の危険あり、進路を20度変更せよと、船に合図を出せ」と命じた。返ってきた信号はこうです。「そちらが進路変更せよ」。艦長は再度指示した「私は艦長だ。そちらが進路を変更せよ」。すると「こちらは2等水兵です。そちらが進路変更しなければなりません」。
艦長はついに怒り、吐き出すように言った。「信号を送れ。こっちは戦艦だ。進路を帰ろ!」。変えってきた光の点滅は「こちらは灯台である」だった。我々は進路を変えた。艦長が経験したパラダイムシフト。「ああ、なるほど」と納得する瞬間、いわゆる「アハ体験」だ。
4
習慣は断ち切れるものだ。習慣は身につけることも、断ち切ることもできる。だがどちらにしても、応急処置的な手段は通用しない。強い意志を持ち、正しいプロセスを踏まなくてはならない。
アポロ11号が月に到達するためには、地球のとてつもない引力を断ち切らなくてはならなかった。ロケットがリフトオフして最初の数分間、距離にして数キロ足らずの上昇に必要としたエネルギーは、後の70万キロの飛行に使ったエネルギーをはるかに上回る。
習慣はちょっとやそっとの意思の力では断ち切れない、生活を多少変えるだけで断ち切れるものではない。「リフトオフ」には並外れた努力が必要になる。しかし、引力からいったん脱出できれば、まったく新しい次元の自由を手にできる。
5
『ガチョウと黄金のタマゴ』というイソップの寓話は、一つの自然の法則、すなわち原則を教えている。真の効果性は二つの要素で成り立っている。一つは成果(黄金の卵)、二つ目はその成果を生み出す資産あるいは能力(ガチョウ)である。
黄金の卵だけに目を向け、ガチョウの世話を怠ると、黄金の卵を産む資産はたちまちなくなってしまう。ガチョウの世話だけして、黄金の卵など眼中になければ、自分もガチョウも食い詰める。
この二つのバランスがとれて初めて効果的なのだ。これを「P/PCバランス」と名づけている。 Pは成果(Production)を意味し、PCは成果を生み出す能力(Production Capacity)意味する。「7つの習慣」の土台となる効果性のパラダイムだ。
6
成長の連続体では、依存は「あなた」というパラダイムを意味する。あなたに面倒を見てほしい、あなたに結果を出してほしい、あなたが結果を出せなかった、結果がでないのはあなたのせいだ、というパラダイムである
自立は「私」というパラダイムである。私はそれができる、私の責任だ、私は自分で結果を出す、私は選択できる、ということである。
相互依存は「私たち」というパラダイムである。私たちはそれができる、私たちは協力し合える、私たちがお互いの才能と能力を合わせれば、もっと素晴らしい結果を出せる、と考える。
「7つの習慣」は、依存から自立へ、そして相互依存へと至る「成長の連続体」を導くプロセスである。
7
人間を人間たらしめているのは、感情でも、気分でもない。思考ですらない。自分の感情や気分や思考を切り離して考えられることが、人間と動物の決定的な違いである。
あなたが今すぐにでも自分の人生の主導権を握るための方法を提案しよう。一つは何かを約束して、それを守ること。もう一つは、目標を立て、それを達成するために努力することだ。
他者の弱点や欠点を批判的な目で見るのをやめ、慈しみ深い目でみる。問題はその人の弱点や欠点ではなく、それに対してあなた自身がどんな反応を選択し、何をすべきかである。問題は「外」でなく「内」にある。