ハーヴィー・ペニックのレッドブック

『ハーヴィー・ペニックのレッドブック』 本條 強(訳) 2005年11月 日本経済新聞社
 


 
 
 

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「バックスイングでヒールアップしてごらん」そう、ペニックさんは言う。僕はずっとベタ足でスイングしてきた。言われるままに左足のカカトを上げ、何度か素振りを行う。「君はバックスイングで、体重が右足に乗り切らない」。だからヒールアップしろと言ったのかと、納得した。
 

「今のスイングを忘れないで。そして週2回、7番アイアンだけで60球打って、打つ前には必ず、ちゃんと芝の草を刈る素振りを2回すること。1ヶ月後に、私にレポートを送りなさい」。ペニックさんの目はとてもやさしかった。
 

「練習する時は、自分が草刈りをしていると思ってほしい。クラブで草刈りをしていると。それも日給ではなく、時給で働いているつもりで練習してほしいんだ。つまり長い時間をかけるほど、実りも多いということだね」。
 

ペニックさんからいただいた『リトル・レッド・ブック』には、ペニックさんのサインとともに、次の言葉が添えられていた。「テイク・デッド・エイム」。死ぬほど目標を定めなさい。ゴルフだけでなく、人生においての言葉でもある。
 
 
 
 

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プロでもビギナーでも、ボールが上手く打てるようにすることができたら、本当に鳥肌が立つほど嬉しいんだよ。いつでも夜、天井を見ながら、明日、どう教えようかと考える。よく考えて、翌日に言うこともあるんだ。
 

それまで誰も言ったことがないことを言ったからといって、オリジナリティーに富んでいるとは限らない。オリジナリティーとは、自分が真実であると確認したことを口にすることです。
 

ゴルフの薬はよく効きます。副作用がでてしまうのです。ゴルフスイングというのはデリケートなものです。ちょっと変化させただけでも、すぐにまったく異なったスイングになってしまうことが多いのです。
 
 
 
 

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スイングに問題があるとき、まず初めに、スイング自体に問題があるのか、それとも、インパクト時のクラブフェイスの向きに問題があるのかを知ること。これがとても大切なことなのです。
 

あなたにとって感じのよいグリップが探しだせたら、変えないことが賢明です。グリップをあれこれ変えていると、バックスイングを修正し、そのバックスイングに合わせてダウンスイングも修正するということになってきます。
 

ある日、あなたの調子が悪くても、それは忘れてしまいましょう。次の機会にもまだ調子が悪いようなら、グリップ、スタンス、目標の定め方、ボールの位置をもう一度確認してみることです。大半のミスは、スイング以前の問題なのです。
 
 
 
 

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チッピングクラブ1本と、パター1本、ボール1個だけを持って練習グリーンからゴルフを習い始めるのが、子供にとっての理想的なやり方です。これは、本当は大人の初心者にも当てはまるのですが。
 

「死ぬ気で目標を定めなさい」。一旦ゴルフボールに向かってアドレスしたら、その瞬間、そのボールを打つことがあなたの人生の最も大切なことだということ。そして目標となる物をみつけ、それに狙いを定めること以外は何も考えてはいけないということです。
 

4人または4万人の前で恥をかくのではないかと悩んだり、自分のスイングが人の目のどう映るかというようなことは忘れて、ボールが飛んでいって欲しい場所にだけ神経を集中させることです。念じることで筋肉がボールを目標に打ちだしてくれる。
 
 
 
 

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アベレージゴルファーが進歩する時は、ワンストロークずつ良くなるわけではありません。進歩は一気にやってくるものです。95は突然90になるのです。87は一夜にして81になってしまうものなのです。ただスコアを75から72に縮めるためには、いかにショートゲームを進歩させられるかどうかにかかっています。
 

2週間、練習時間の90%をチップとパットに費やし、残りの10%だけをフルスイングにすることです。こうすれば95のスコアは必ず90になるはずです。私が保証しましょう。
 

アベレージゴルファーがすばらしい素振りをした後に、素振りとは全く違うスイングをして、ひどいショットを繰りだすのを何度見てきたことか。理由は簡単です。素振りではインパクトでフェイスをスクエアにする必要がないからです。
 

すばらしく美しいのだけど、空気以外に何も触らない素振りを行うプレーヤーを何度見てきたことか。素振りをするなら、草の先を切るとか、じゅうたんの柄を狙うとか目標になるポイントを作りましょう。フェイスをスクエアにする練習になります。
 
 
 
 

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自信と楽観主義は異なります。自信とは、このショットを過去何度も上手く打てたという裏付けがあり、またできることがわかっている場合を言います。楽観主義とは、まだ一度も上手く打てたことがないショットを今度こそ初めて上手く打てると期待することを言います。
 

このショットにはこのクラブしかないのだと完全に信じ込むことです。そして思い切りの良いスイングをすることです。
 

何とかあなたを惑わせて、負かそうとするプレーヤーはどこにでもいるものです。私が聞いた中では、次のセリフが最高だったかもしれません。「バックスイングする時は、息を吸っているかい。それとも吐いているかい」。こういう発言を「ザ・ニードル(針のひと刺し)」と呼んでいます。
 

ゴルフをすることによって、ある種の瞑想の仕方を覚えることができます。コースを回っている4時間に、あなたはゲームに集中し、雑念を一切追い払うことを覚えます。ゴルフはもしかしたら、精神科医よりも多くの人を正気に保ってきたのかもしれません。
 
 
 
 

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腰の高さまでバックスイングをした時、つまりシャフトが地面と平行になる時、クラブの先は真っ直ぐ空を向いていなければならないのです。そうなっていればあなたの手首はコックされています。
 

リー・トレビノは生徒に言いました「あたまをまえにうごかすな」。ボールは爆裂音とともに飛んでいきピンの10フイート先に落ち、バックスピンして戻ってきました。「ステイ・ビハインド・ザ・ボール(ボールの後ろに頭を残せ)」です。
 

ゴルフスイングに魔法の動きがあるとすればそれは、私が何度も言っている動作です。「ダウンスイングを始めるとき、右肘を体に引き付けつつ、体重を左足に移し変える」。これは一つの動作であって、二つの動作ではありません。
 
 
 
 

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上手なゴルファーは、ベン・ホーガンのスタンスを好む人が多いと思います。俗にホーガンフットポジションと言われているものです。右足は飛球線に対して直角に、左足はつま先を目標へ数インチ向けたものです。
 

この良い点は、右足をスクエアにしたことによって、長くなってしまいやすいバックスイングを短くすることができ、やや開いた左足が体重移動をやりやすくし、フォロースルーもとれるように手助けしてくれることです。
 

とは言っても、身体の回転を大きくするために、右足のつま先はほんの少し外に向けた方がいいと思います。
 

スタンスをクローズにしたいなら右足を飛球線から数インチ下げ、腰と肩をそれにフィットするように向けること。多くのプレイヤーは右足を下げただけで、クローズドスタンスになったと思いがちですが、腰と肩の位置も変えなければ、何も変わってないのと同じです。スタンスをオープンにするには、左足を飛球線から数インチ引いて、腰と肩もそれに合わせます。