朝令暮改の発想(鈴木敏文)

『朝令暮改の発想』 鈴木敏文(セブン&アイ会長) 株式会社新潮社(2007年12月)
 


 
 
 

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私の人生は明らかに一日一日、目の前に浮かんだチャンスをつかみ、実現していくその繰り返しでした。もしそのチャンスを見逃していたら、セブン-イレブンのコンビニチェーンも、店内で売る弁当も、おにぎりも、セブン銀行のATMも、存在していなかった。
 

ものが売れないのは、まだ表面に現れず顕在化していない消費者のニーズを掘り起こすような新しい商品やサービスを提供出来ていない自分たちに責任がある。
 

変化の激しい時代には、むしろ今までどおりのことを続けているほうがかえってリスクが大きく、新しいことに挑戦することでリスクが回避されるという発想に切り替えるべきです。
 
 
 
 

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この競争社会にあって、本当に必要な挑戦は(競合している他者との比較でなく)自分たちの目指す「あるべき姿」に向けて絶対を追及し、絶え間なく踏み込んでいく挑戦であることを忘れてはいけません。
 

一度立てた計画をいかに維持するかではなく、状況が変化したら固執することなく、新たな仮説に基づいた新しい計画に切り替え、素早く対応する。それを「朝令暮改」というなら、臆することなく朝令暮改に徹する。
 

人の上に立つ人間は絶対に単なる「いい子」になってはなりません。「いい子」は上にも下にもいい顔をするため、なかなか決断できす、自分で責任を取ることもできません。
 
 
 
 

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挑戦とは反対する人たちを説得するところから始まるといってもいい。挑戦そのものが困難というより、反対する人たちを説得できず、あきらめてしまうのではないかと思うほどです。
 

挑戦する側と反対する側は発想の次元が異なるため、本来なら、なかなか接点がない。それでも相手が納得するのは、挑戦する人間が語る未来の可能性や新しい価値に相手も「共感」し、過去の経験や常識を飛び越えるようになるからではないでしょうか。
 

ビジネスの社会で挑戦するとは、まさに仮説を自分で立て実行していくことであり、仮説を立てない人は仕事をする気がないのと同じであると肝に銘じるべきでしょう。
 
 
 
 

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基本的なことがらは多くの場合、初めはきちんとできても、次第にいい加減になってきます。けっして容易ではないからこそ、あたりまえのことを徹底して実践すれば、逆にあたりまえでなくなるのです。

一人一人の消費者の行動に目を向けると、矛盾した二つの顔が浮かび上がってきます。一つは「自分を差別化したい」心理です。そして、もう一つは対照的に「人と同じでありたい心理」です。
 

コンビニエンスストアは、いまや地域の生活に根をおろした社会インフラです。いまコンビニに問われているのは、消費生活のプラットフォームとして、いかに新しい機能を組み込み、潜在的な市場を掘り起こしていくことが出来るか。
 
 
 
 

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「その件なら本人に何回も話しておきましたから」。しかし、何回話しても、相手がいまのやり方ではダメだと気づいて自覚し、行動に結び付かなければ話したことにはならない。
 

部下に仕事をうまく分担できれば、それでマネジメントが出来ていると思っている、それは大きな勘違いです。自分の役割を気に入らない人に仕事の面白さを味あわせ、やりがいを持たせる。ここでマネジメントの力が問われます。
 

いまの仕事のやり方を変えるということは、その人の生き方そのものを根本的に変えることと同じ意味を持ちます。それぐらい難しいのです。
 
 
 
 

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過去の延長線上で考えて誰もが賛成することはおおむね未来の展望が乏しく、逆に「うまくいくわけがない」と反対されることは多分に未来の可能性を秘めている。
 

生き方を変えるとは、何かにしがみついている自分に対して、このままでいいのか問い直し、しがみついているその手を離して一歩前に踏み出すことです。
 

ビジネスは、能力や努力だけでなく運も左右します。過去の経験や既存の常識を超えた考え方や動きをすることで、普通に行動していたらめぐりあえないような幸運を引き寄せることができる。