『勉強大全』 伊沢拓司 2019年2月 株式会社KADOKAWA
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400人中180位。『高校生クイズ』優勝当時の学年内成績です。たしかに、番組では僕のことを「開成トップクラス」と紹介していました。しかし、クラスメイトたちはそれ以降、僕より上位の成績をとるたびに「おっ、今回もトップクラスだわ(笑)」と僕をいじってきました。
勉強ができないからってバカなわけではありません。勉強ができないというのは、単にやってないか、やり方は自分に合ってないかのどちらか。だから今現在勉強ができないからって、自分の資質をを疑うのは時間のムダです。
腐っている暇があるなら、自分のやり方を見直すべきです。できるヤツは正しくやっています。
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結果的にクイズは受験の役に立ちました。そう、僕は「高校生クイズ」などの対策をすることにより、「対策した経験」を持っていたのです。対策とは何か。それは相手を分析し、自分を分析し、適切な対処法を取ることです。それは受験でもクイズ番組でも、根本は同じだと考えます。
さらに、この「対策」という視点を持って受験に臨むことでより良い効果が得られます。それは何も受験についてだけでなく、もっと大きな、それこそ人生なんて言ってしまってもいいような規模についてです。
対策とは「相手を見て、自分を見て、相手の攻略法を考えること」です。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」と孫氏が言っていましたが、両方知った上でどうするかを考える必要もある、と思っています。孫子もそう思っていただろうけど。
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受験対策というものは、相手だけでなく自分の分析が大切になってきます。その「自己分析」の結果は、もちろん受験だけにとどまらず、生きている上でやってくる様々な場面で役に立ってくれるでしょう。
半ば強制的に壁が立ちはだかり、それをどう攻略するかを考えなければいけない「受験」と言う制度は、いつか必要になる自己分析の機会を無理やりにでも創ってくれるという点で価値がある。僕はそう考えています。
若くして自分の性格や思考と向き合い、分析し、それをどう乗りこなすかを考える。この体験が勉強以外にもいろいろな課題に対して応用できそうだ、ということは容易に想像できます。このような価値ゆえに、僕は「受験が人生の役に立つ」と主張するのです。
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「受験生活」という「非日常」。今までに体験したことのない、人生の行く末をある程度決めるためにとった選択。ある時点で知らず知らずのうちにもう非日常に踏み入れているという、そのこと自体をまずは把握しておくこと。
毎日がリスクを伴った選択の繰り返し。もう俺は受験生だ、当然のように自分の人生の行く末を自らの選択に委ね続けるぞ、と。少年漫画のようですが、戦いの中に生き、戦いを目標としてしまえば、怖いもんなしですよね。
あなたの「受験生活」は普通のことではありません。環境を変える選択、目標に向けた予定の選択、自分の状態をどう向上させていくかという選択、それらはすべてリスクを伴った行為であると、意識して臨むべきだと僕は考えています。
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今、あなたは合格を目指すために現状を脱しなければならないとします。つまり、自分が変わらなければならないとしましょう。さて、環境と性格、どちらかを変えなければならないとしたらどちらを選びますか。僕は「性格より環境の方が変えやすい」と思っています。
仮に「部活で毎日帰宅が遅くなり、勉強できない」という問題を設定します。部活を変える、学校の授業をより有意義に使う、帰ってから塾の勉強をする、いろいろなパターンで「環境を変化させる」ことができると思います。
この問題に、性格の面からアプローチするとどのようなアプローチが考えられるでしょうか。「弱音を吐かず前を向こう」「どこでも集中できるような集中力を身に付ける」「疲れに負けることなく根気強く夜やろう」「受かりたいという気もちがあるならやれるはずだ」・・・要するに頑張れってことです。
この「性格より環境の方がいじりやすい」という原則は、自分にマッチした勉強法を考える上で大切な原理になると考えています。「勉強生活」の中で訪れる様々な困難、課題を分析し、解決していくための一つの指標として、考える軸にしてみて下さい。
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要するに「マクロ暗記」モノは、どれも「大事な構成要素」と「それらのつながり方さえ覚えておけばいい」わけです。(略)このような構造ゆえに、マクロ暗記においては「構造」が暗記の対象となります。
暗記は何度も言いますが「何も見ないで再現すること」です。ですから練習法としては「何も見ないで再現できるかどうかを試し続ける」ことがメインになります。
これを僕は「反復」と呼んでいますが、これは「単純に何度もやること」を指してはいません。ミクロ暗記においてまず何より意識すべきは「完璧」を目指すことです。マクロ暗記と異なり、ミクロ暗記では「惜しい」が何の価値も持ちません。正解か不正解か、それだけの世界です。まずはこの心がけが大事でしょう。
アウトプットの過程では必ず「答え」を通過します。わからなくて答えを調べた過程はもちろんインプットに近いことをしていますし、他のケースでもいったん「答えはこれだよね」というふうに正解を通過します。アウトプットの時にはインプットの作業も同時に行われているわけです。
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復習とは何か。それは、「同じ間違いをしないようにすること」です。「同じ間違いをしないための勉強」と「何も見ないで再現できるようにする勉強」。「復習」と「暗記」のことです。ちょっと近づいてきたような気がしませんか。
(復習は)自分が十分に理解できているかを試し、不十分なところは再度覚え直し、またそれを確認する、という中で完璧を目指すことです。これを「授業で一度インプットしたことを、アウトプットとその後にくるインプットで補強し続ける」と言い換えれば、まさしくこれは暗記のやり方です。
それは、「本番で同じ問題が出た時、お前は正解できるか?」ということを意識して、出題の形式を考えながら知識を再度入れ直すこと。同じ考え方でいろいろなことが片付くなら便利です。僕が「暗記と復習は同じなんです!」という主張にこだわり続けてきたのはこういう理由です。