倉本昌弘のゴルフ上達問答集

『倉本昌弘のゴルフ上達問答集」 倉本昌弘 2008年4月 日本経済新聞社 インタビュー・構成:本條強
 
 
 

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常に90を切るには、まず自分のショットをよく認識することが大切です。それもナイスショットばかりでなく、ミスショットについての認識が必要です。状況に応じて、どんなミスショットがどういった範囲で出てしまうのかという具体的なことです。
 

そうしてコースに出たら、自分の起きうるショットを想定しながら、ゲームを組み立てていきます。たとえミスショットが出ても、常に想定内であれば慌てることもなく、次の一手が打てるわけです。ゴルフを将棋や囲碁を指すように組み立てていくのです。
 

90を切れないアベレージゴルファーを見ていると、常に出たとこ勝負のゴルフをしています。ドライバーは飛ばせるだけ飛ばしたいと力一杯に振り回す。アイアンはひたすらグリーンオンしか考えない。これではプロでも悲惨なスコアになってしまいます。
 
 
 
 

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まずは飛ばそうとするのをやめることです。みなさんはドライバーだけでなく、どんなクラブでも自分の最大飛距離を出そうと力一杯振る。いいえ、そんなことはありませんと言うけど、私に言わせれば、自分の最大飛距離をいつもの普通の飛距離だと思っている。
 

ドライバーだって飛ばす必要はない。いいところへポーンと運んでやればいいんです。いつもの8割の力のスイングで十分なんです。そしてその飛距離が自分の飛距離であると思って、いつも同じ飛距離を打つことを心がけるのです。
 

ボールの後ろに立って目標を定め、ボールの横にきてフェースを目標に合わせる。合わせて構えたら、自分の理想のトップを思い浮かべる。そしてそこに向かって自然に上げていく。あとは上げていったのと同じテンポで振り下ろすだけ。これをすべてのショットでやることです。
 
 
 
 

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例えばグリーンまで残り200ヤードとしましょう。スプーンならグリーンに届くかもしれないと、これを使ってグリーン手前のバンカーにまんまとはまる。ではそれが嫌だとして、次の5番ウッドを選択する。でもこれだとバンカーにいらずとも30ヤードが残る。
 

バンカー越えのそのアプローチは物凄く難しくなります。ならば、9番ウッドやユーティリティを使って70とか80ヤードを残す方がうんとやさしい。ウェッジのフルショットのほうが30ヤードのアプローチよりも遥かにやさしいからです。
 

皆さんは、とにかく少しでもグリーンに近づこうとする。でも近づいたからといってやさしいとは限らない。グリーン周りのアプローチは難しいシチュエーションが多いからです。ですから、ウェッジのフルショットができる60から100ヤードの距離をしっかり練習することです。
 
 
 
 

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グリーンでは、どんなところからでも2パットであがること、これが大前提。パットの練習は皆さんはやらないでしょう。ですから、確実にできることを教えましょう。ラウンドする日の朝、普段より少しだけ早く行って、グリーン上で20分、10ヤードの距離を2パットでいくように練習するんです。
 

2パットでいかなくてもカップインするまでやること。すべて入れたら、別のカップ目がけて同じことを繰り返すんです。そうすると、上りのパットや下りのパット、スライスラインやフックラインがあるでしょうから、いろいろと試せる。
 

最初のパットをしっかり寄せる。次のパットをきちんと沈める。こうすればその日のラウンドのパットがかなりの確率で2パット以内におさめられるようになります。もちろん、ワンパットなら3オンでもパーになりますので、楽に80台になるというわけです。
 
 
 
 

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一発だけ飛ばしたいという人は、これからの話は聞かないで、私ではなくて他の人に聞いて下さい。200ヤードを250ヤードにしたいとかね。そうではなく、平均飛距離200ヤードを210ヤードにしたいという人は、これからの話を聞いてみて欲しいと思います。
 

アマチュアの皆さんにとっては、ヘッドスピードよりもクラブヘッドの芯にボールを当てることの方が大切です。なぜなら、ヘッドスピードを上げても芯に当たらなければ曲がりがかえってひどくなってしまう。今のままのヘッドスピードでいいから、芯に当たる回数をふやすこと。これが第一歩。
 

初めに考えることは、スイングをこうこうしたらということでは決してない。クラブの芯に当てることです。芯をとらえる確率の高いプロや上級者にとっては飛距離をアップすることは難しい。でもアマチュアは芯にあてるだけで飛距離がアップできるんです。
 

確率を考えれば、ナイスショットして240ヤード飛んだ回数より、当たらずに200ヤードを切った回数のほうが遥かに多いはずです。それを心しておくべきなんです。
 
 
 
 

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実はメンタルに問題があって飛ばない人が多いんです。池がある。OBがある。谷がある。バンカーがある。そうしたことでスイングが乱れてしまう。練習場ではいいのに、コースに行くとトップやチョロが出る。これでは平均飛距離を上げることはできないでしょう。
 

平均飛距離のアップは、技術が4でメンタルが6の割合だと思います。だからと言ってメンタルを鍛えなさいとは言いません。大切なのは、どういうときにどういう症状がでるのかを理解すること。それを理解するだけで、芯に当たるようになり、その結果、飛距離は確実にアップするのです。
 

そのためには、ボールを曲げる練習をして、どのように打てばどれくらい曲がるかを知ることなんです。曲がる幅と曲がる癖を理解する。そうすれば、右が嫌だ、左が嫌だという場面で、その癖を利用して上手く打てるようになる。心の中をコントロールできるようになるということになるんです。
 
 
 
 

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ピッチングウェッジ、アプローチウェッジ、サンドウェッジの3本を用意します。そして、それぞれを、8時から4時のスイングで何ヤード飛ぶかを見ます。キャリーとランもしっかりと見ます。次に9時から3時のスイング、ハーフショットで同じように距離を把握します。
 

そして10時から2時のスイング、スリークオーターショットで距離を同じように見て行きます。そして11時から1時のスイング、これは私の考えるフルスイングです。これも同じように3本のウェッジを使って距離を知るわけです。こうして12通りのショットとその距離を把握します。
 

大切なことは、距離を把握するだけでなく、自分の好きな振り幅と好きなウェッジをしっかり認識することなのです。そうすればその距離にアプローチを残せばいいということになりますし、残った距離を自分の一番得意なクラブの得意な振り幅で打てることになります。
 
 
 
 

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具体的に30パットを切るというパット術、それにおいて考えることは、3パットをなくし、1パットを最低7回は行うということになります。そうすれば、各ホール2パットの36から7を引けば29パットということになりますから。
 

パットは方向性と距離感の二つの要素が大切なわけですが、まずは距離感です。距離感をよくするには、まず芯で打つこと。これが大切な第一歩です。構えたときにボールとパターフェイスが離れている人って多いと思いませんか。ピッタリと付けるぐらいでなければ、芯にはあたりません。
 

ロングパットの距離感がつかめるようになったら、次はファーストパットをどこに外すかです。ファーストパットで考えるべきことは、次のパットが上りのストレートラインに残るようにすることなんです。次がいかに打ちやすいところかを考える。それはパターでも当てはまるということなんです。
 

傾斜の曲がるラインのときに大切なことは、どこで曲がるかその頂点を探すということ。つまりブレークポイントですね。そのブレークポイントに向かって打つということが大切なわけです。
 
 
 
 

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アマチュアのゴルフは面白い。どうしてこんなミスをするのかと考えるとその人の人間性や人生まで見えてくることがあります。でも、ここで言いたいのは、月イチゴルファーでも90を切ることぐらいは簡単だということ。考え方をちょっと変えるだけ、練習の仕方を変えるだけで簡単に切れる。
 

月イチゴルファーが90を切るもっとも大切なものが、アプローチなんです。アプローチを上達するためには、本当のことを言えば、球数を打つしかないんです。プロが何でアプローチが上手くできるのかといえば、アプローチの練習をもの凄くしているからです。
 

90を切るゴルフとは、それはつまらないゴルフになります。ドライバーは思い切って振れないし、セカンドショットでピンは狙えないし、グリーンさえも狙わないこともある。アプローチでもピンを狙わずに乗せるだけ。パットだって狙おうとせず寄せていく。