効率が10倍アップする 新・知的生産術(勝間和代)

『効率が10倍アップする 新・知的生産術』 -自分をグーグル化する方法- 勝間和代 2007年12月 ダイヤモンド社
 


 
 
 

1/9
「情報はお金よりも大事である」「情報の生かし方次第で、私たちの生産性、すなわち付加価値の量が決まってしまう」ということを最初に、呪文のように頭に叩き込んでおきましょう。
 

現代では、情報を使ってお金を儲け、そのお金でまた情報を買う、という良循環を働かせることができるため、情報を持っている人、あるいは情報を持っている人からその情報を入手できる人とそうでない人とでは、今後も格差が開き続けることになります。
 

資本主義の本質は「賢くない人から賢い人へお金が移動する仕組み」ということです。ここで賢さというのは、価値ある情報の有無と置き換えることもできるでしょう。

このような状況を「情報主義」と私は呼んでいますが、情報主義とは、「情報を持っていない人から、情報を持っている人へ、お金が移動する仕組み」といい換えることができるのです。
 
 
 
 

2
多くの人は、お金儲けそのものや、お金が直接儲けられそうな情報にはガツガツと食いつくのですが、どうやってお金儲けにつながるような情報を効率的に手に入れるかということには比較的淡泊です。しかも、情報同士をつなげることについては、さらに淡泊です。
 

しかし、現在は情報こそが通貨です。したがってお金を稼ぎたかったら、情報を集めてそれを組み合わせてみて、それが行動変革につながり、儲けが生まれるという何段階かのステップにするほうが、遠回りなようで実は近くなります。
 

原理原則論からケースを学び、それをお手本に自分で考えをまとめて行動し、そして、ケースの中から自分自身のコアとなるフレームワーク(思考の枠組み)をつかみ、そのフレームワークと原理原則の整合性をつかむ、というのが情報管理の上級者のプロセスです。
 
 
 
 

3
フレームワークとは、「ある目的に沿って整理された思考の枠組み」を指します。「思考の引き出し」といっていいかもしれません。どのように情報に対して軸を作り、分類し、場合分けを行い、整理する場所を作るのかがフレームワークです。
 

「ディープスマート力」とは、フレームワークを超えて、ある分野における長年の経験に基づき、時間をかけて私たちの暗黙知を貯めて、新しく洞察ができるようになることをいいます。
 

私たち人間は、論理力としてのフレームワーク力をつけることで、基本的な情報収集に対する勘所は、コンピューターを上回ることができ、そこに潜在意識までを動員したディープスマート力をつけると、さらに新しい力を生み出しことができます。
 

「フレームワーク力」を使って大まかな情報をつかみ、「ディープスマート力」を使って経験・知識から洞察力を深め、さらに実際にその知識を実践・実行して「失敗力」を使って何が本質なのかを経験から見極める。この繰り返しが1%の本質にたどりつく近道です。
 
 
 
 

4
本を読むということは、一方的に著者からレクチャーを受けるのではなく、著者と対話しているイメージを持ってください。ほんとうは他者メディアとしてその著者から直接話を聞くのがベストなのですが、それができないので、本という形で代替えしているわけです。
 

私は中古でしか手に入らない本以外は原則として、新品を買うことにしています。なぜなら、知的財産としての価値を尊重しているため、印税の入らない中古を買うことは、著者に対して失礼だと思うからです。
 
 
 
 

5
多くの人は残念ながら、こういった本(ハードカバーで優秀な研究者の方たちの長年の研究と情報が詰まった本)には目もとめず、『サラリーマンでもラクをしながら○億円儲かる方法』のような本を1000円ちょっとで買ってしまい、かえって損をするのです。
 

なぜなら前者は膨大なエビデンスに基づいた証拠であるのに対し、後者は単なる著者の経験であったり、思い込みに基づくものであって読者である私たちにとって再現性がないからです。
 

この「再現性」というのは1つのキーワードで、ハードカバーのしっかりとした証拠に基づいた本は私たちに再現性をもたらしてくれます。再現性の有無は良書の目安のひとつです。
 

※エビデンス(根拠、検証結果)

※再現性(同じ条件の時には、再び同じ事象が起こる性質)
 
 
 
 

6
言葉で表す時に知っておかなければいけない法則があります。それは、自分が知っている言葉からしか、話し言葉も書き言葉も出てこないということです。すなわち、普段聞いている言葉、読んでいる言葉に、私たちの話し言葉、書き言葉は限りなく似てくるということです。
 

したがって、書き言葉や話し言葉の質量を高めたいと思ったら、普段からよいものを読み、よい言葉を聞くことが必要になってくるのです。よい言葉のインプットがあるほど、アウトプットでも、適切な表現をつかうことができるようになります。
 

アウトプットというと、どうしても何か正式な文書にするとか、プレゼンをするようなイメージなのですが、実際に大事なのは、日常のささいなことに気づいて、そのことに疑問を感じて調べてみて、新しいことを発見する、という繰り返しがアウトプットの技術なのです。
 
 
 
 

7
アウトプットとして必要な技術は、絞り込みの技術です。重要なことは、いかに枝葉の情報を切り落として、本質的なものに集中するかです。「簡単なものほど伝わりやすい(簡略化)」「必要な時にはいつでも深い情報に入れる(階層化)」「全体像がいつでもわかる(フレームワーク化)」の3つを心がけましょう。
 

その場合に必要な2つの概念が「ピラミッド・ストラクチャー」と「MECE(ミッシーと読む)」です。私たちの体をピラミッド・ストラクチャーで分解すると、頭、胴体、右手、左手、右足、左足に分かれ、さらに頭が髪の毛、耳、目(略)などに分かれていきます。すなわち、何かものを分解していく手法です。
 

さらに、この分解をする際のポイントは、MECEに物事を分けていくということです。MECEを日本語にすると「漏れなく、重なりなく」という概念です。私が本を作るときには、いつもこのMECEをイメージして分解しています。
 
 
 
 

8
知的生産の成果を使った人脈づくりでの一番の基本は「情報のGive5乗の法則」です。すべて、ここからスタートできるかどうかから始まります。よく「ギブ & テイク」といいますが、この考えでは人脈作りはうまくいきません。まずは見返りを求めずに、情報を発信し続けます。
 

なぜそれが有効かというと、知的生産の成果について、ネット上やその他オフラインなどでその情報を発信することでかかる単体のコストは、1人に発信しても、何百人、何千人相手に発信しても、労力がほとんど同じだからです。それであれば、出し惜しみせず自分が持っているべストの情報を公開したほうがいいでしょう。
 

「情報は通貨である」といいましたが、実際自分が考えたもの、知的に生産したものは自分の財産であり、通貨なのです。それを発信していることは貨幣を刷っていることと同じです。そして、その刷った貨幣が回り巡って自分の人脈となり、人生を豊かにしてくれるのです。
 
 
 
 

9
1%の本質を見極める6つの技術。①フレームワーク力をつける ②ディープスマート力をつける ③失敗力をつける ④ベスト・プラクティスを学ぶ ⑤自分の価値を出せないところはバッサリ切り捨てる ⑥本代をケチらず良書を読む。
 

6つの技術を生かすコツは「脳に格納箱を作ること」です。私たちが行う格納は「概念化」であり、「抽象化」です。新しい本質を学んだら、その本質を画像でも音声でも文字でも、その組み合わせでも、自分に理解しやすい方法に噛み砕いて、自分の箱にしまっていくのです。
 

そして、箱の情報同士が結びついたり、ある箱の情報があふれかえったり、まったく箱に入らないような情報が増えてきた時に、「何か新しいことが起きているな」ということがわかり、また新しい箱を用意するようになります。