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GAFA(スコット・ギャロウェイ)

『GAFA』スコット・ギャロウェイ(ニューヨーク大学スターン経営大学院教授) 渡会圭子/訳 2018年7月 東洋経済新聞社
 

グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの戦略分析ではなく、本質を述べた本です。共通するのは、友人に聞けないことも聞ける検索を通して、何を “いいね” したかを通して、投稿や写真を通して、ユーザーのことを深く正確に知ろうとする、そしてすでに知っているということ。
 

 
 
 

<アマゾン>
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全米の世帯の44%に銃があり、52%にアマゾン・プライムがある。富裕層では固定電話よりアマゾン・プライムと契約する世帯の方が多いといわれている。アメリカのネット業界における2016年の成長の半分、そして小売業の成長の21パーセントがアマゾンによるものだった。
 

1990年代、eコマースはほぼすべての一般企業にとって、粗悪で実入りのない事業だった(いまでもそうだ)。eコマースでの成功のカギは販売をすることではなく、企業の力を大げさに宣伝し、砂上の楼閣が崩れ始める前にどこかのカモに売りつけてしまうことだった。
 

小売業はアメリカ経済全体としては成長していない。ということは、アマゾンが成長している分、どこかほかのところが衰退しているはずだ。敗者が誰なのかといえば、アマゾン以外のすべてだ。過剰な店舗数、一律の賃金、好みの変化、そしてアマゾンが小売業に最悪な事態をもたらした。
 
 
 
 

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四騎士はすべて他社より先を行くことを旨とし、大胆な計画に賭け、失敗に寛大だ。この失敗を恐れない遺伝子は、アマゾンの、さらに大きく見ればアメリカ経済の成功の核心である。ジェフ・ベゾスは当然グローバリストではあるが、アマゾンの文化は間違いなくアメリカ的だ。
 

富への道はリスクが満載で、そのリスクが、とにかく危険なのだ。頭にボールがぶつかって倒れても立ち上がり、ズボンの汚れを払い落し、バッターボックスに立ってはもっと思い切りバットを振るように励ましてくれる社会。それこそ、億万長者やを量産するための秘伝のソースだ。
 

アメリカの破産法は他国に比べるととても寛大だ。そのためリスクを恐れない人が引寄せられ、大方の予想どおり、その大半が受け入れられる。世界で最も富裕な50人のうち29人はアメリカに住み、ユニコーンの3分の2は本社をアメリカにおいている。
 
 
 
 

<アップル>
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毎年行われるアップル開発者会議ではジョブズがステージに立って、新しい製品アップグレードについて次々と発表する。そしてステージ袖に向かって歩き出したかと思うと途中で足を止め、振り向いてこう言う。「そうそう、もう一つ…」。そして世界を変える。
 

アップル・ユーザーはアップルを持つことで自分たちは社会の画一的な歯車ではないという自負を強めた。設立した会社の社員と私は、性能不足のわりに高価格のアップル製品に20年にわたって苦しめられた。それはただ、自分たちは他人とは発想が違うと主張したいためだけだった。
 

一種の超レア感がアップルの成功のカギである。2015年第一四半期に、全世界で出荷されたiphoneのシェアは18.3パーセントにすぎなかった。しかしアップルは業界の利益の92パーセントを占めた。これこそ、高級品のマーケティングというものだ。
 

アップルを賞賛する記事を書くライターは多いが、その大半は同社が高級ブランドであるという視点が欠けている。
 
 
 
 

<フェイスブック>
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フェイスブックの影響力は未曾有のスピードで大きくなっている。それは私たちが切望するものがそこにあるからだ。消費者の購買欲を高めるという面から見ると、フェイスブックが特に大きな影響力を及ぼしているのはマーケティングの漏斗(じょうご)の一番上にある「認知」の段階だ。
 

私たちはフェイスブックの子会社のインスタグラムを通してものごとを知り、そこからアイデアと欲望が生まれる。友人がメキシコでJ・クルーのサンダルを履いている写真を見るとそれが欲しくなる。トルコの高級ホテルの屋上でカクテルを飲んでいる写真をみると、同じ経験がしたくなる。
 

そう思い立つと、どこで手に入れられるかをグーグルやアマゾンを検索して調べる。つまりフェイスブックはアマゾンより漏斗の上部にある。フェイスブックは”何”を提案し、グ―グルは”方法”を提案し、アマゾンは”いつ”それが手に入るかを教えてくれる。
 

規模とターゲティング能力を併せ持っているメディア企業はフェイスブックだけだ。フェイスブックは18億6千万人のユーザーが自分のページをつくる。広告主がある個人をターゲットにしたければ、フェイスブックがその人の行動に関連するデータを集めてくれている。
 
 
 
 

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皮肉なのはフェイスブックが、周りの友人たちよりその人のことをよく理解しているのではないかと思えるレベルにまで達していることだ。フェイスブックは私たちがクリックしたもの、使っている単語、動き、そして友人のネットワークから、詳細な、そしてきわめて正確な人物像を描きだす。
 

私たちの実際の投稿は、友人たちに見せるために描かれたもので、ほぼセルフプロモーションである。フェイスブックの中のあなたは。写真を修整したあとのあなたである。ユーザーは人生最高の体験、覚えていたい瞬間、そして覚えていてもらいたい瞬間のことを投稿する。
 

しかし、フェイスブックはだまされない。フェイスブックは真実を見抜く。そこにいる広告主も同じだ。だからこそフェイスブックはこれだけの力を持つようになった。私たちの方を向いている側、つまりフェイスブックのユーザーは、本当の私たちをさらけ出させるための餌なのだ。
 
 
 
 

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フェイクニュースは民主主義にとって大きな脅威である。それらを排除しようとすればフェイスブックは世界で最も影響力を持つメディア企業としての責任を受け入れざるをえない。もっと頭の痛いことは、虚偽の記事を削除することで、何十億というクリック数と多額の収益を犠牲にするのだ。
 

私たちは、ソーシャルメディアは中立だと考えがちだ。それはただ材料を提供しているだけなのだと。人間は自律的で道理が分かった存在であり、真実と虚偽は区別できる。何を信じて何を信じないか選ぶことができる。互いにどう関わるかを選ぶことができると。
 

フェイスブックは作業プロセスに人間によるいかなる判断も入れようとしない。それは公平さを保つための努力だと主張する。人間が加われば、目に見えるバイアス、目に見えないバイアスが生じるという。あまり知られていないが、もっと大きな理由がある。人を入れるとコストが生じるということだ。
 

メディアを独占するフェイスブックとグーグルは、「我々をメディアと呼ばないでくれ。我々はプラットフォームだ」というスタンスだ。社会的責任を回避するこの姿勢によって権威主義者やヘイト活動家がフェイクニュースを巧みに発信できるようになった。
 
 
 
 

<グーグル>
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グーグルは検索結果について、どれがオーガニック検索で、どれが広告かを明確に示すことで、神に近い姿を維持している。広告とは切り離されているように見えるために、オーガニック検索の信頼が増幅している。その結果、グーグルの検索結果は、これ以上ないほど正確なものとなった。
 

消費者はオーガニック検索(広告の影響を受けない)を信頼している。私たちはその公正さを好み、広告よりオーガニック検索結果をクリックすることが多い。神との違いは、グーグルが人びとの望み、夢、不安を盗み聞きしてカネを稼ぐということだ。
 

グーグルはホームページを神聖な場にした。そこにあるのは検索窓と、グーグル・ドゥードルのロゴだけだ。広告主が金を積んでも、グーグルのホームページの一角を買うことはできない。グーグルはインターネット時代に信頼が必要になると予測して、それをつくりあげようとした。
 

BMWが毎年のように車の性能を大きく向上させると同時に、価格を11パーセントずつ下げたらどうなるだろう。自動車業界の他の会社は、ついていくのに苦労するだろう。その通りで、いまフェイスブックを除き、メディア業界の他の企業はグーグルについていくのに苦労している。
 
 
 
 

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あなたの最近の検索履歴を見て欲しい。誰にも知られたくないことをグーグルには打ち明けているはずだ。誰にも自分の考えを聞く者はいないと、私たちは無邪気にも信じている。しかしはっきり言っておこう。グーグルは聞いているのだ。
 

神(グーグル)が偉大なのは私たちが何をするかだけでなく、何をしたいかを知っていることだ。だれにも打ち明けたことはなくても、神はネットのモールを歩くあなたを見ている。高級ブランドのバンプスやボーズの新しいヘッドフォンが欲しくてたまらないことを、神はご存知なのだ。
 

従来のマーケティングでは、人々を共通する性質を持つ集団に分類した。ラテン系、田舎者、退職者、スポーツファン、サッカーママなど。それらの集団に属する人は誰もが同じと考えた。2002年、郊外に住むリッチな独身者はみなカジュアルなカーゴパンツをはき、アウディを運転する。
 

グーグルの登場で、私たちはそれぞれ違う問題、目標、欲望を持つ個人とみなされるようになった。私たちはそれぞれ違う質問をする。これは神が広告事業においてより高度な予知能力を発揮する力となっている。より関連性が強く、よりあなたの心にそった提案を行うことができるのだ。
 
 
 
 

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